FujiSankei Business i. 2005/11/25
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が二十四日発表した二〇〇五年九月中間決算は、連結最終利益が七千百十七億円となった。これは、トヨタ自動車の九月中間最終利益五千七百五億円を上回り、全国七株式市場に上場している三千七百八十四社(九月末)で最高水準の利益を記録した。
不良債権処理で計上していた傘下銀行の貸し倒れ引当金(決算上の損失)が大口融資先の収益改善により利益として戻ってきたのが大きく寄与した。
また、この日出そろった大手銀行六グループの九月中間決算は、りそなホールディングス(HD)を除く五グループの連結最終利益が前年同期比で増益を確保。六グループの最終黒字の合計額は約一兆七千二百九十一億円となり、バブル期を上回って過去最高を更新した。
〇五年三月期に全グループが半減目標を達成した不良債権比率(全貸出額に占める不良債権の割合)も、三月末の2・9%から2・4%に低下した。不良債権処理に充てるコストが減少し、黒字幅を押し上げた。〇六年三月期も過去最高の最終黒字を計上する見通しで、不良債権処理をほぼ終えた大手行の業績が本格的な回復軌道に乗り始めた格好だ。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は不良債権の処理損失が縮小し、同七・三倍に急伸。みずほフィナンシャルグループも二度の上方修正を経て最終黒字が同44・7%増の三千三百八十五億円と大きく膨らんだ。預金をはじめとする資金と貸出金の利ざや改善は進まないものの、販売手数料など非金利収入に勢いが出てきた。
不良債権問題が峠を越え、大手行の経営の軸足は財務健全化から収益強化という新しいステージに移る。来年一月にはMUFGの傘下銀行も統合し「三菱東京UFJ銀行」が誕生し、金融界の勢力争いが一段と激化する。生き残りを目指す戦いは本番を迎える。
【三菱UFJフィナンシャル・グループ】4大メガバンクのうち、三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスが10月1日に合併して発足した、わが国最大の総合金融グループの持ち株会社。総資産約200兆円を誇り、傘下に普通銀行、信託銀行、証券会社をはじめ投信、カード、リース会社や米国銀行などを擁する。このうち、普通銀行の東京三菱銀行とUFJ銀行は来年1月1日に合併し、「三菱東京UFJ銀行」になる。
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大手メガバンクは、公的資金を使い生き残ってきているだけに、厳しく見ていかなければ
ならないと感じます。
どんな経営をこれから実践していくか、これからの真価が問われる。
その結果と実績は、私達預金者が決め選び抜いていく"眼"をこれからは養っていかなくては
ならない。
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9月中間決算 三菱UFJ、トヨタ抜く みずほ/三井住友、統合以来の最高益 3大メガバンク 顧客獲得 不断の努力を
http://www.sankei.co.jp/news/051125/morning/25kei003.htm
二十四日に出そろった大手銀行の平成十七年九月中間期決算は、十月に発足したばかりの三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が民間企業としては国内最大のトヨタ自動車の最終利益を追い抜き、みずほ、三井住友両フィナンシャルグループも統合以来の最高益をあげた。ただし、融資先の業績改善や低金利下での個人投資意欲の高まりといった外部環境の好転が大きく、顧客の支持獲得に向けた三大メガバンクの競争が厳しさを増すのはこれからだ。(渡辺浩生)
◆不良債権処理コスト減
三大メガバンク好決算の最大の“立役者”は、問題融資先の業績改善に伴う不良債権処理コストの大幅減だった。
最終利益が前年同期比7・4倍の三井住友は、銀行単体の不良債権処理損失が前年同期よりも三千二百六十一億円も減少。これだけで最終利益の八割を占める。
三菱UFJが最終利益でいきなり国内トップに躍り出たのも、傘下のUFJ銀行でダイエーなど大口融資先に積み上げてきた巨額の貸し倒れ引当金が費用ではなく利益として戻ってきたことが最大の要因だ。
不良債権処理で他グループを先行していたみずほも関連損失が百四十六億円と低水準にとどまったことが最終利益を膨らませた。
◆景気回復の恩恵
本業では手数料収入が軒並み増加した。特に個人向け投資信託や年金保険販売の好調は、銀行の営業努力もあるが、量的緩和による超低金利で利息がほとんどつかない中、「もう少しリスクをとろうと消費者自身も考え始めた」(三菱UFJの畔柳信雄社長)意識変化が大きい。中高年層の豊富な金融資産が貯蓄から投資に少しずつ動き出したのだ。
長期のデフレで減少を続けた貸し出しも「底打ちした」(みずほの前田晃伸社長)ようだ。激しい金利引き下げ競争で利ざや収入は相変わらず不調だが、海外向け融資が増加したほか、「国内企業も負債返済最優先の傾向が弱まり、前向きに転じてきた」(三井住友の北山禎介社長)。
住宅ローンも住宅金融公庫の規模縮小とマンションの建設ラッシュを追い風に、みずほを除き増加。企業収益の回復が個人所得の改善に波及する景気回復の好循環を、銀行が享受し始めた。
◆健全性では格差も
一方で、資本の健全性や経営効率では格差も浮かび上がる。みずほは公的資金残高を当初の二兆九千億円超から二割程度に削減。「資本のかさ上げ」と指摘される繰り延べ税金資産の圧縮も進んだ。三菱UFJは、旧UFJ時代の公的資金や繰り延べ税金資産を抱え込んだが、資本に占める比率はわずかにみずほを下回り、健全性で首位。三井住友は公的資金残高が一兆千億円と返済競争に後れをとり、繰り延べ税金資産の比率も最も高い。対照的に人件費などの経費率は三井住友が最も低く、経営の効率性では優位に立っている。
三者揃い踏みの好業績は、店舗統廃合に伴う利便性低下などこれまでの顧客の犠牲抜きには語れない。トップは「新しいサービスの開発で顧客に利益を還元したい」(前田社長)「合併してよかったと顧客から評価されたい」(畔柳社長)と意気込む。規模に釣り合った競争力をつけ、顧客を満足させる不断の努力と創意工夫が問われる。